【2025年経審改正】資本性借入金で評点アップ!建設業者が知るべき新常識と対象制度一覧
「公共工事の受注を増やしたいが、経審の点数が伸び悩んでいる…」
「財務体質を改善して、もっと大きな案件に挑戦したい…」
建設業を営む多くの経営者様が、このような課題をお持ちではないでしょうか。
2025年7月1日以降の申請から適用される経営事項審査(経審)の制度改正は、そんな皆様にとって大きなチャンスとなるかもしれません。今回のキーワードは「資本性借入金」。これまで「負債」として扱われてきたこの借入金が、一定の条件下で「自己資本」と見なされるようになります。
この記事では、この画期的な変更が貴社の経営にどのようなインパクトを与えるのか、どの制度が対象になるのか、そしてどう活用すればよいのかを、どこよりも分かりやすく解説します。
そもそも「資本性借入金」って何?借金なのに資本扱い?
資本性借入金(資本性劣後ローンとも呼ばれます)は、一言でいえば「借金(負債)と資本のいいとこ取りをしたハイブリッドな資金調達法」です 。
会計上は「負債」として計上されますが、金融機関が融資審査を行う際や、そして今回の改正で経審においても「自己資本」と見なすことができる、特殊な借入金です 。
なぜ資本と見なされるのか?その秘密は3つの特徴にあります。
- 返済順位が低い(劣後性):万が一会社が倒産した場合、他の一般的な借入金の返済が終わった後でなければ返済されないため、他の債権者から見れば資本に近い緩衝材の役割を果たします 。
- 長期・期限一括返済:返済期間が5年超と長く、元金は満期に一括で返済します。期間中は利息のみの支払いで済むため、月々のキャッシュフローが圧迫されません 。
- 業績連動金利:赤字など業績が厳しい時は金利が低く抑えられ、逆に業績好調時には金利が高くなる仕組みです。
【本題】2025年経審改正のインパクト!評点はこう変わる
今回の改正の核心は、この資本性借入金が経審の評価で自己資本として扱われる点です 。これにより、企業の総合的な評価を示す「総合評定値(P点)」が大きく向上する可能性があります。
具体的に影響を受けるのは、以下の2つの重要な評点です。
- 経営状況評点(Y点)の改善
財務の健全性を示すY点。資本性借入金が負債から自己資本に振り替えられることで、「負債回転期間」や「自己資本比率」といった指標が劇的に改善します 。特に自己資本比率はY点への影響度が大きい指標の一つであり、評点アップに直結します。 - 経営規模評点(X2点)の向上
企業の規模を示すX2点は、「自己資本額」の大きさも評価対象です。新ルールでは、資本性借入金の額を自己資本額に直接加算できるため、企業の財務規模を大きく見せることが可能になります。
【最重要】自己資本と見なされるローンはこれだ!対象制度一覧
「うちの借入金も対象になるのか?」という点が最も気になるところでしょう。
全ての借入金が対象になるわけではなく、国土交通省が定める要件(償還期間5年超、期限一括償還、劣後性など)を満たし、特定の機関が提供する制度である必要があります。
現在、自己資本として扱える可能性があると考えられる主な制度は以下の通りです。
政府系金融機関の主要制度
- 日本政策金融公庫(JFC)
- 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン):スタートアップや新規事業に取り組む企業向けの代表的な制度です 。
- 新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付制度
- 災害対応型劣後ローン
- 商工組合中央金庫(商工中金)
- 危機対応業務による中小・中堅・大企業向け劣後ローン
その他の制度
- 中小企業活性化協議会版「資本的借入金」
- 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構による既往債権の買取制度
- 農林漁業経営資本強化資金
- 産業復興機構による既往債権の買取制度
ご自身の利用している、あるいは検討しているローンが対象になるか、まずは契約書を確認し、取引金融機関に問い合わせてみましょう。
知っておくべき注意点とリスク
経審上有利な資本性借入金ですが、メリットばかりではありません。以下の点には十分注意が必要です。
- 好業績時の高金利:事業が成功すると、通常の融資よりも金利が高くなる可能性があります。
- 「返済の崖」:満期に元金を一括返済するため、計画的な資金準備が不可欠です。
- 逓減(ていげん)ルール:最も注意すべき点です。ローンの残存期間が5年未満になると、自己資本と見なせる割合が毎年20%ずつ減少していきます。つまり、効果は永続的ではないため、長期的な財務戦略が求められます。
申請手続きは簡単3ステップ
この制度を活用するための手続きは、以下の流れで進めます。
- 証明書の取得:公認会計士、税理士、または建設業経理士1級の専門家から、対象ローンが要件を満たしていることの「証明書」を発行してもらいます 。
- 経営状況分析の申請:登録経営状況分析機関へ、証明書の写しなどを添付して申請します 。
- 経営規模等評価の申請:管轄の行政庁(都道府県など)へ、自己資本額を修正して申請します 。
まとめ:財務戦略の新時代へ
2025年の経審改正は、建設業者にとって単なるルール変更ではありません。財務戦略を見直し、企業の競争力を飛躍させる絶好の機会です。
資本性借入金は、財務体質を強化し、より大きな公共工事を受注するための強力な武器となり得ます。しかし、その特性とリスクを正しく理解し、長期的な視点で計画的に活用することが成功の鍵です。
まずは自社の状況を確認し、専門家や金融機関に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。この新しい波を乗りこなし、事業のさらなる発展を目指しましょう。